福川塾長メッセージ


 

寺子屋小山台に期待する

 

福川 伸次

 

 寺子屋小山台は、発足して10年になる。活動も軌道に乗ってきた。その狙いは、次に時代を担う若い方々が集い、各界で活躍している経験者の知識と体験を学びながら、知的な議論を戦わせ、新しい発想を養い、友情の輪を広げようということにある。

 「寺子屋」の歴史を見ると、文明、元和の時代(1516世紀)に遡る。当初は庶民の教育機関として発足し、数も少なかったが、安政、慶応の時代になると、300を超えるようになる。近代開花に庶民が目覚めたからである。開国をめざした志士たちを育てた吉田松陰は、「志を立てることがすべての始まりである」と説いたという。

 今や、当時以上の大変革期にある。世界がグローバリゼーションに動き出し、イノベーションに挑戦しつつあるが、そうした環境変化のなかで、日本は果たしてどのような社会をめざし、世界にどのような貢献を果たそうとするのであろうか。人口減少と高齢化が進めば、当然経済規模は相対的に低下するが、世界から尊敬されるような信頼と倫理、革新と活力、そして知性と文化に彩られた社会を構築することができれば、日本に新しい時代を築くことができる。日本の近代国家形成の過程をみると、その多くは政府依存によるものであった。しかし、今や、政府に頼っていては新しい時代は開けない。

 「百聞は一見に如かず」という。しかし、私は「百見は一考に如かず」だと思う。なぜならば、いくら見聞を広げても、自ら考えを深め、熟慮しなければ、自分の思想にも提案にもならないからである。スマホやパソコンで得た情報だけでは新しい思想もアイデイアは生まれない。さらに、私は「百考は一行に如かず」だと思う。自らの考えを行動に移してこそ、社会に貢献できるからである。今の日本に求められているのは思考と行動だと思う。

 「二番手発想」を超えて、画期的な発想と新しい行動の輪が寺子屋小山台から広がることを私は密かに期待している。